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写真|鈴木心 写真集

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写真っていうタイトルの写真集、なんて扱いづらいんだ、ちょっと呼ぶにも、それは写真のことなのが、写真集のことなのか、混乱する。文字って、会話って難しい。 写真を始めたのは、2001年ということになっている。写真大学に入学し、父から譲り受けたニコンのF2というカメラを持った時からのカウント。でも本当はそうではない。高校生のときに流行ったインスタントカメラブーム、僕はそのとき高校の近くにある写真屋さんでアルバイトをしていた。お客様がもってきたフィルムを現像し、プリントするあれ、だ。 その時から数えると、写真のキャリアはもう30年ということになる。いや、30年なのだろう。大学で、こいつらには負けたくない、そう思ったのは、写真屋の後取りと、高校から写真部だった、奴ら、、、、。でも待てよ、僕もまぁまぁキャリアがあったということになるんだろうか。 実はニコンの前に父から譲り受けたカメラがある。ミノックス35これは暗いところがぜんぜん映らなくって、ことある度にシャッターを押したのに、現像から上がってくると、あれ?映ってない、そんな繊細なカメラだった。その次は浪人中に海外旅行に行ったときにもらったVivitarのAPCなコンパクトカメラ。これはよくできていて、このころに撮った写真は今見ても、通じるところがある。 このころの写真にタイトルをつけるなら?それはやっぱり、写真だろう。そうそう、写真が趣味、じゃなくて、カメラが趣味という人がいる。もし僕がそうだったら、この作品集の名前はカメラになっていたかって?そんな恐れも少しはある。 写真を撮る、ということは言い訳になる。出かける、出会う、見る、見せる。そんなあなたの人生を拡張する言い訳になる。この作品集に収録されている写真のほとんどは、学校を休んで出かけた、その記録のようなものだ。東京から下道で向かった長崎の軍艦島。自衛隊の総合火力演習、タイはバンコクから、建設現場まで、あそこに行ったら何がみえるんだろう?そんな目の欲望のままに日本中を徘徊した、その記録。そして、そのおかげで忘れない、記憶たち。 写真は、目の前の一瞬を、視覚で、選ぶ、作業である。ああ、世界はこんなに広いのに、そして時間は流れていくのに、そんな永遠の中からのたったの少ししか私たちは記録として残すことができない。記憶として思い出すこともできない。そんな諸行無常の世界に気付いたのも、きっと写真という発明と、その道具をこうやって自由に使うことができるからだろう。 もし、世界に自分しか存在していなかったら?自分の存在を知ることができるだろうか?否、写真や、写真を見せる他者がいるからこそ、その反応で僕たちは、自己を認識することができる、そんなバカな。いや、そんなバカなことがあるのだ。でも、もう一つ、そんな僕たちが存在する世界を、その外側がない、と否定する術をまだ僕たちは持っていない。そんな世界と自分との関係性を、映し出す道具、それが、写真なのである。 鈴木心 - 2008年刊行、鈴木心の最初で最後の写真集。2003年、大学生の時からアシスタント時代の2008年時代までの写真の総集編です。これさえあれば、鈴木心にとっての写真らしさの全てを語れる一冊です。あたりまえだけど、全てフイルム撮影。もう二度とここにはもどらない。10年を経て、もう一度振り返る、自身の原点、そしてこれから。

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